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赤とんぼ ... [家族]

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今日の風は心地良く爽やかだ
※爽やかは俳句の季語で秋だそうです。今は清々しいが適当らしいです。無学ですいません。

でも自分に吹く風はまだもの悲しい

昨日は予報通りに夕刻からちょっとした嵐が吹き荒れた
16時半に寺に到着した 北の空は黒くなり始めたがまだ雨は落ちていない
仕事を早めに切り上げ帰宅した娘も一緒だった
遅れて倅もやって来た
17時に火を入れると係の男性に告げられた
この寺で火葬した我が家の犬猫は4頭と1匹でこの日の三毛猫で6回目になる
これが最後になるのだろうな もぅ動物を飼うことも無いだろうから ...
最初の愛犬が世話になった頃はロッカー式の仏壇も数えるほどだった
人様の相手だけでは寺の経営も大変だったのだろう 
ペットの葬儀・霊園の取扱寺としては走りだった
それが年を追うごとにロッカーが埋まりだし
慰霊祭の折など境内が参列者で溢れかえるほどになった

我が家の動物たちはお袋が亡くなった際に合同墓地に移した
だからもぅロッカーを持っていない
三毛猫も仲間達の元へ送ってやろうと考えていた
娘もそれで良いと言っていた
17時にはまだしばらくというところで係りに呼ばれた
6畳ほどの空間に家族で並ぶ
坊さんが入ってきた 一礼をし説明を終えるとお経を読み始めた
目の前には眠っているように三毛猫が横たわっている
娘の頬を幾筋もの涙が伝う いよいよ目にすることも触れることもこれが最後だ
読経が終わり坊さんが退出した
骨になるまで小1時間を要するので控え室で待つようにと告げられた
外に出ると既に雨が落ちていた 
本堂の上がり口付近には6匹の野良猫が集まっている
寺の関係者が餌を与える時間らしい
人になれているせいか1匹の白黒模様の猫が擦り寄ってきた
思わず背中を撫でた
「あっ!ミューだ!」嫁さんと娘の声が響いた
驚いて目を据えると本当に愛猫にソックリな三毛猫が
警戒するようなそぶりでじっとこちらを窺っていた

雨に濡れた木立の隙間から「赤とんぼ」のメロディが流れる
それは17時を告げる役所の広報スピーカーからのものだったが
もの悲しいそのメロディはいっそう自分等の胸を熱くした
周囲はどんどん暗くなり始めた 雨も怒ったように待合室の屋根を叩く
大分時間が経過した頃「お待たせしました」と係の男性が迎えに来た

鉄製の箱の中には三毛猫の骨だけが横たわっていた
それはまるで標本の様にも感じられた
人間の時と同じように箸でつまみ上げ骨壺に移す
雨さえ降らなければそのまま合同墓地に移す予定だったが
扉を開けることが出来ないため可愛らしい赤色の骨袋に収められた
三毛猫の骨は娘に抱かれて我が家へ帰ってきた
49日を迎えたら改めて合同墓地へ埋葬する予定である
家族全員が異口同音に「別れたくなかったのだな 我が家へ帰りたかったのだな」と
呟いた

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