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天城をガイドする(1) [自然]

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春のような陽気が連日続いている。
ヘルニア持ちのダックスには最適な気温で助かる。
それにしても陽気だけは晩秋の風情にはほど遠い。
今日はこれから雨降りの予報で風も強くなってきた。
伊豆は天城の八丁池をトレッキングしてきた。
予定では今日がその日だったのだが、天気図を調べると天候が崩れることが判断できた。
下調べが正しかったようで前倒しにして良かったと安堵している。
それというのも、今回はお得意様からガイドを頼まれていたからだ。
天候悪化で万一のことがあったら取り返しが付かないもの。

早朝5時半に出発の計画だった。
目的地は水生地下駐車場だ。
東名高速の集中工事が今月末まで行われている。
渋滞が始まる時間帯を避けるには、早朝しかない。
ところが、寝坊してしまった。
お得意様のTさん宅に到着したのが6時30分。
東名高速に入る時間は恐らく7時だから頭の中は焦りだけが一杯だった。
しかし、幸いなことに一つの渋滞にも出会さず第二東名に入ることが出来た。
恐らく下り線だったことに運があったのかも知れない。
ここで大失敗をやらかした。
Tさんは定年まで大手企業の役職部長だった。
なかなか威厳のある人で、無駄な口は叩かない人と聞いていた。
お得意様でもあるし、かなり緊張を伴いながらの運転になると想像していた。
ところが、まぁよくしゃべること。
そうなるとこちらも相手をしなければならない。
思いがけない展開に緊張が解けたのか、降り口の沼津を通り過ぎてしまった。
ゲゲッ戻り返さなきゃと慌てる。次のインターチェンジである冨士まで行くしかない。
Tさんに謝り先を進む。幸いにも、しばらく走るとスマートインターの表示が出た。
下りはあっても上りはあるのか恐る恐る一般道へ出る。
あった!上り入り口があった。
20分遅れで伊豆縦貫道に合流することができた。
時刻は8時を回っているから通勤時間帯だ。
案の定、車は進まない。
当初の予定より1時間強遅れている。
高山でもあるまいし、まあ良いかと気持ちを切り替えた。

1時間遅延で駐車場に到着したが、入り口付近は工事資材や車両で塞がれている。
ややっ!駄目か...
工事関係者が「山か?」と問うので「そうです」と答えると数人の作業員が入り口を開けてくれた。礼を言い愛車を進ませ無事に駐車する。
「八丁池?」と年配の男性が声を掛ける。「そうです」と答えると「もう大丈夫だと思うけどマムシには気を付けなよ」と教えてくれた。
出発際に「行ってらっしゃい」と皆が送り出してくれた。
こんな工事関係者にはお目に掛かった経験が無いのでちょっと感激する。
車道を渡れば、登山道の始まりだ。
もっとも登山道と云ってもしばらくは舗装された作業道との兼道だ。
途中に「川端康成」さんの顔像と「伊豆の踊子」の一節が刻まれた碑が建っている。
さぁいよいよ石川さゆりさんの「天城越え」の世界に足を踏み入れるのだと歌好きの自分は胸を踊らせた。
Tさんの体調を確認する。
「大丈夫です」と答えるが表情は緊張気味だ。
「丹沢とは違い、緩やかな道だから大丈夫ですよ」と声を掛ける。
しばらく進むと本当の登山道入り口に着いた。
ここも治山工事の仮設プレハブ小屋が建っており、車両も数台止まっている。
八丁池まで最短のコースは「水生地歩道」だが通行止めの看板立てが置かれていた。
そうなると舗装路を進み、昭和天皇が歩かれた「御幸道」を選択するしかない。
コースタイムは約2時間だ。
Tさんに「遅い早いの指示を必ず言って下さいね」と速度の確認をさせる。
いつものソロ登山だったら、間違いなく走っている斜度ではあるが、NHKBSの「日本百名山」に登場するガイドよろしく、小さな歩幅でゆっくりゆっくりと先を進んだ。
Tさんの息は早くも荒い。
30分毎の休憩を決め、その都度水を飲んで貰った。
「ところで、水を何本持ってきました?」と聞くと「いつもと同じで2本です」と答える。
「えっ!駄目ですよぉ少なくとも1.5Lは用意しないと」
「いつもそんなに飲まないから」と答えるTさん。
「それじゃあバテてしまいます」水分補給の重要さを偉そうに説いた。
それでもなんとか少しのコースタイム上乗せで休憩地の東屋に到着した。
ザックを下ろさせるとフーッと深い息をしている。
「疲れましたか?」「いやぁ私は駄目ですね」と恥ずかしそうに謙遜する。
「とんでもないこれが山登りですよ」「僕のようにコースタイムを競う登り方は邪道なんです」と励ました。
携帯した梅昆布を2つ差し出すと美味そうに口に放り込んだ。
梅干しが苦手な自分が必ず用意する行動食でとにかく美味いし塩分がとれる。

稜線が低い天城の山なので直ぐに空が見える。
稜線には出ずにそのまま延々とトラバースが続くから標高は稼げない
歩きが苦手なTさんにはちょっと気の毒ではある。
本当に静かで品格のある山々で小説や歌の題材になることを実感する。
とくにヒメシャラの群生は素晴らしい。ピンクが混じったような明るい茶色の波...
ツルッとした木肌。
そうかと思うと大小のブナの木が現れる。
雪の重さに耐える雪国のそれとは違いスクッとした立ち姿だ。
人の手が入ったような自然の間引き具合なのでまるで里山だ。
所々に赤や黄色の落葉樹が挟まれる。
足下は落ち葉の絨毯。
それこそ小説の世界に足を踏み入れてしまった感覚に陥る。

Tさんを励ましながら馬酔木の群生を抜ける。
いよいよ「八丁池」まであと少しだ。ここまで3時間を要してしまった。
ソロであれば、もう相当下っているはずだが、今日はガイドである。
責任が大きい。
見えた!「八丁池だ!」
長くなったので後半は次回に。




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